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near2図書館 館長こと、にゃんちー。私の読書感想文と、頭の中の本をご紹介。日々の徒然(凸凹日誌)

頑張り屋さんのお母さんへ、本当は寂しん坊の君へ【読書感想文】

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こんばんは。にゃんちーです。

Twitterのお仲間さんが、ここで紹介した本を手に取ってくれたんです。本当にとても嬉しかったのにゃ🐈✨

そこでのやりとりで、オススメした絵本。今日はこの1冊をば。

 

日頃、家事に仕事に育児に・・・と頑張るお母さんへ。

そして本当は寂しん坊の子供たちへ、この本を送ります📚

 

ではさっそく。

 

 

『よるくま』 酒井駒子著・絵 偕成社


全部試し読みが出来るサイトもあるので、そちらのリンクも貼っておきます◎


あらすじ

ベッドに入った男の子。お母さんが部屋にきて、男の子はお母さんに話しかけます。昨日の夜中に男の子が出会った、「よるくま」のことを。

 

夜中にトントンとノックの音が。

そこに居たのは、可愛いくまさん。名前は「よるくま」

男の子はよるくまに色々とたずねます。どうして来たの?って。すると、よるくまは、どうやらお母さんを探しに来たらしいのです。

めが さめたら おかあさんが いなかったって。

 

そこで男の子は、よるくまと一緒に、よるくまのお母さんを探しに出かけます。

よるくまは、その名の通り、

よるみたいに まっくろ

だけど、

むねの おつきさまは ひかってる。

 

そうです。

よるくまは、月の輪ぐま をまっくろにしたような姿なのです。

男の子はこう、思います。

こんなかわいいよるくまを おいて おかあさん どこにいったの。

 

ハチミツ買いに行ったのかな?

それとも、よるくまと一緒によくいく公園かな?

もしかして、もうお家に帰ってきてるかな?

男の子は色々考えて、あちこち、よるくまのお母さんを探します。

 

男の子のお母さんはと言えば、男の子のお話に付き合ってくれます。時々、そのお話を聞いては思うことを口にしながら。

 

よるくまのお家に行ってみたけど、やっぱりおかあさんはいませんでした。

とうとう、よるくまは泣き出してしまいます。

よるくまの涙はまっくろ。溢れる涙で、どんどん、どんどん、黒く、暗くなっていきます。

まっくらになった時、助けて流れ星!ってお願いすると・・・

 

その先には、探していたよるくまのお母さんが居ました🐻

どうやらよるくまのお母さんは、お魚をつってお仕事をしていたみたいです。

よるくまのお母さんは、よるくまと、そして男の子を抱っこしました。

ああ あったかい。おまえは あったかいねえ。

 

そう言って、よるくまのお母さんは、二人を抱っこしたまま、お家に帰ることにしました。

 

そして男の子とよるくま、二人は一緒に、

きょうは、もう、おやすみ🌙

 

 

よるくまの登場シーンがとにかく可愛い

もう本当に。このページで即買いした。笑

では、どうぞ!

 

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もう、何も言えない可愛さ。

きっと、親からすれば、自分の子供たちは、こんなにも可愛いのだと思うのです。

 

私がこのよるくまの登場シーンが好きな理由。

それは2つあります。

ほぼこれが理由ですが、よるくまが、私の大事にしているくま(のぬいぐるみ)と、ソックリなのです◎

わたしのくまは、色こそ白いのだけど、月の輪ぐま。サイズ的にも似たような感じです。今の私が抱きしめたら、ちょっと小さく見えます。私が子供だった時は、くさまん、大きく感じたのですが、私がでかくなってしまった。

(とても小さい声で言いますが、このくま🐻とうさぎ🐇(誕生日一緒)と寝ています)

 

それから、もう1つの理由。

よるくま、という名前で文中にはその姿はまっくろ、と書かれていますが、実際の絵はご覧の通りで、黒じゃないのです。

濃紺。

厳密には、おそらくですが、赤かピンクぽい色の上に、濃紺を重ねて塗っています。この色合いが絶妙だと、唸りました。

この絵の表現力が、本当に凄いと思うんです。

 

この よるくま の絵の凄さをもう少し語らせて・・・

よるくまは、夜、それも真夜中に来たくまさん。

実際に、真夜中は確かに真っ暗なのだけれど、不思議と真っ黒ではない。私はそう思っています。

黒の中に、色んないろがある感じがするんです。例えば漆のような、艶っぽいどこまでも深く単一な黒さ、ではないと思うんです。

 

そしてこれは夜の心理状態をも表している気がしてならないのです。

夜って子供にしろ、大人にしろ、真っ暗な時間のなかで、色々考えちゃったり感じたりすると思うんです。

大人は大抵、日ごろの不満や悩み事、反省とかかもしれませんが・・・。子供だって、その真っ暗な時間で、同じように何かを感じているんだと思うのです。

 

そんな感覚を、文字通りの黒ではなく、濃紺で持ってきたという酒井駒子の感性が、本当に素敵です。

 

そして、よるくまの胸にあるお月様は、まさに夜道を照らすお月様のように光っている。やっぱり、真っ黒なんかじゃないんです。

真っ暗な中にある、明るさが、どれだけ温かいか。

三日月でも、足元くらいは照らしてくれる明るさ、それがどんなにホッとするか。

私はこのよるくまを見て、そんなことを感じました。

 

それから、よるくまの、ちょっとぽってりした、丸っこくて可愛い体型(いわゆる幼児体型)であるところも分かります。毛並みこそ描かれていませんが、酒井駒子には珍しく、光の反射による色の濃淡がついていて、シルエットがよく分かる。そこに不思議と重さを感じられます。いわば、よるくまの体重。

 

そもそもですが、こぐまと子供をリンクさせたところが、まず上手い。

ぽてっとして手足がムチムチした、ずんぐりむっくりの体。

頭が大きくて、首があるのかないのか・・・首が短いところ。

これが、くま以外だったら・・・どうでしょう?ちょっと想像してみてください◎

 

 

力になりたい、その気持ちが「育てる」

この絵本には、主に2つのメッセージが描かれていると思うのです。

男の子は、よるくまのお母さん探しをすることで、ちょっと成長していくんですよね。

本当はきっと、男の子も、よるくまと同じ気持ちだったんだと思うんです。

夜、お母さんがいない。寂しくって泣けちゃう、って。

まるで自分を投影しているかのようなよるくまの姿をみて、男の子は自分に出来ることを探していくんです。

もしかしたら、子供って、そうやって成長していくものなのかもしれないなあって思いました。小さくたって、幼くたって、「誰かの力になりたいな」って。そう思う気持ちが、子供を成長させてくれるのかもしれません。

 

たとえ親の前では強がっていたって、寂しい気持ちを表にださなくたって、本当は寂しん坊な気持ちはきっとあって、子供ながらに「力になりたい」って思うから、その寂しさを隠しているのかもしれません。

 

抱きしめるとあったかい

もう1つは、親へのメッセージだと思っています。

よるくまのお母さんの言葉がすべてじゃないでしょうか。

 ああ あったかい。おまえは あったかいねえ。

 

これはぎゅっと凝縮された、「あたたかさ」だと感じています。

体温とか、気持ちとか。

それは、親にとっても子供にとっても、「あったかい」ものなんです。

忙しくて色々考えることも多いかもしれません。親として・・・って反省することも時にはあるかもしれません。

でも、本当はきっと、抱きしめる。それだけで充分に子供への愛情は伝わるのだと思います。 何しろ、絵本の最後、男の子とよるくまの寝顔は、とっても穏やかで幸せそうだもん。

 

おわりに 絵本について

あらすじを読むと長く感じるかもしれませんが、とっても短い絵本です。

子供にとっては、自分の気持ちに寄り添ってくれている絵本。

親にとっても、自分の気持ちに寄り添ってくれている絵本。ここは、よるくまのお母さんが、どうしてお魚をつるお仕事をしているかのくだりで感じるものがあるんじゃないかなと。

双方にとって、とても温かい気持ちになる絵本だと思います。

 

絵本って、基本的には子供のための読み物です。

でも、絵本は子供を教育するための道具では、ない。

大人にとっての「都合の良い子供の姿」あるいは「理想の子供の姿」を、刷り込むようなものではないです。ん?なんだか、これ、他の蔵書(記事)でも書いた気がするぞ。

 

確かに絵本で覚えることも多いです。

だけれど、図書館長として言うのであれば、子供のうちに、本当に大切なものを教えてくれる絵本に、たくさん出会って欲しいなあと思います。

そういう絵本は、大人が読んでも心を揺さぶられるものなのです。

 

≪追伸≫

館長こと私、酒井駒子が大好きなので、イチオシなのです。

ということで、酒井駒子が気になった方へ。過去の蔵書をペッと貼っておきます。

よろしければどうぞ m(_ _)m

 

 


 

したらば、今日はこの辺で。

最後まで読んでくれた方、ありがとうなのにゃん◎

またにゃん🐈