心の目をあけてごらん【読書感想文】
こんばんは。にゃんちーです。
冬の夜空、星を見るには一番いい季節です。空気が澄んでいるのでね。
随分寒くなってきたので、今日はほっこりしてもらえる1冊を選びました。
温かい部屋でぬくぬくしながら、ちょっと夜空を見ながら、ぜひ。
『星の王子さま』 サン=テグジュペリ 河野万里子訳
いやはや、本当に単なる偶然ですが、先日紹介した本の翻訳も河野万里子さんでした。
フランス語の翻訳専門なのかなあ。きっとそうだよね。
私は多分、河野万里子さんの翻訳が好きです。
私はフランス語は読めないけれど、それを訳した彼女の言葉はとても温かくて、情緒豊かな日本語なのです。
さて。
こちらも言わずと知れた名作ですね。本当に。
大人も子供も読めるもの。絵本じゃないけれど、不思議と分かる。感覚的なものでしょうか。この本に書かれている一番大切なことは、大人子供にかかわらず、本当はみんな、すでに知っていることなのかもしれません。
特急列車に乗っている間に、忘れてしまうだけで。
あらすじ
あらすじを…と思ったけど、いるのかな?笑
そこらのビジネス書なんかよりもずっと、さっさと読める本なので、読んで欲しいというのが本音。
もう本当にざっくりと。
砂漠に飛行機で不時着した「僕」が出会った男の子。それは、小さな小さな自分の星を後にして、いくつもの星をめぐってから七番目の星・地球にたどり着いた王子さまだった……。(ここまで新潮文庫のHPより拝借m(_ _)m)
王子さまは、地球にくるまでに色んな星にも立ち寄ります。そして色んな「大人」に出合います。変なの、大人ってって思います。
地球に辿り着いても、なお、同じです。
王子さまは、お花ともヘビともキツネともお話ができるので、広い広い地球のあちこちを回り、いろんなものに出会い、色んな話をします。そして人間にも会います。
人間って、変なのって、やっぱり思う。
砂漠に不時着した「僕」と、王子さまは、砂漠で同じ時を過ごします。
王子さまがここに来るまでに教わってきた(変なのって思ってきた)沢山の事を、「僕」は少しずつ、本当に少しずつ共有していきます。時間という流れのなかで。
そうしていつの間にか、「僕」と王子さまの間には絆が育まれていくのです。
そして互いに、いろんなものを「本当にそうだね」って共有していきます。
それはどれも、目には見えないものです。
「僕」の壊れた飛行機が直った時、王子さまもまた、自分の星へと帰っていきます。とても素敵な言葉を残して。
あらすじになってない。笑
だって書いちゃったらつまんないんだもん。こればかりは。今日はネタバレほぼなし、悪しからず。
子供のころ それはまるで星の王子さま
この本には色々な解釈があるところです。
それには敢えて触れません。心で感じてみてください。子供と一緒に読むのもいいんじゃないかと思います。きっと、子供は、王子さまの気持ちが良く分かると思います。
王子さまは、とっても知的で、そうですね…大人からしてみれば、とても鋭いことをズバズバ言ってきます。ここに書ききれないくらいです。
きっとこのblogに辿り着いたあなたは、大人かそれに近い年齢だろうと思います。
でもきっと、子供の頃に、似たようなことを思ってたんじゃないのかな?
少なからず、私は思っていました。王子さまが思ったようなことを。思っていたけど、大人の世界を知らないので、なんだか怒れちゃう!っていう感じで。
そういう気持ちを、王子さまと出会った僕の言葉を借りるとするならば、
でも悪く思ってはいけない。子どもはおとなに対して、広い心を持ってあげなくては。
といったところでしょうか。笑
でも本当にそう思う。
多分、子供の頃の私のほうが、ずっとずっと心も広くて、見ていた世界も広かったもん。何も知らないけれど、何でも知ってる。本当に大事なことは言葉にこそ出来ないけれど、知っている。
本当に探しているものは、言葉に出来ないけれど、自分でちゃんと知っている。子どもですべては大人の都合の下にあったので、社会的には何者でもないけれど、何にでもなれる。そんな風でした。
バオバブには気をつけろ!
王子さまの住む星は本当に小さくて、バオバブの芽をはやく摘まないと、星がバオバブに浸食されていってしまいます。
実際にバオバブって物凄い生命力なんですよね。樹齢1,000年ともいわれているので。
そして、「僕」は、
子どもたちよ!バオバブには気をつけろ!
と言い、また
僕と同じように、長年なにも知らずに危険と隣あわせてきたことを知らせるためなのだ。
とまとめています。
バオバブ…本の中の絵にも描かれていますが、それをみると、なんとも滑稽で可愛らしい。
でもバオバブって、社会の暗黙のルールとか、大人の作ったよく分からない縛りとか。そういうものの例えだと思います。
それって慣習みたいなもので、よく分からないけれど、みんな大人になるにつれてそれに従うようになり、大人になってしまえば最早その理由なんて考えもしない。そうして気づかぬ間に「当たり前」という変なのって思っていたはずのルールに自分も浸食されていく・・・そんなイメージ。私は、そう受け取りました。
危険と隣りあわせというのは、命の危険があるのではなくて、子供のころにはあったはずの感覚と言えばいいのか、嗅覚とでもいえばいいのか、ある種の素直さを脅かす存在なのだと思うんです。
その子供の頃にあったはずのものは、目で見ていたわけではないんです。頭で考えていたわけでもないんです。きっと、心で感じていたんです。
なつく って なに?
王子さまが出会う最後のひとは、キツネ。人じゃないけど。
キツネが一番大事なことを教えてくれます。その前に、キツネは、王子さまに、「なつかせて!」と言います。王子さまは、なつくってなあに?と聞くと、キツネはこう答えます。
もしきみがぼくをなつかせたら、ぼくらは互いに、なくてはならない存在になる。きみはぼくにとって、世界でひとりだけの人になる。ぼくもきみにとって 、世界で一匹だけのキツネになる・・・
そしてこうも教えてくれます。
なつかせたもの、絆を結んだものしか、ほんとうに知ることはできないよ
もしかしたら、懐く、という言葉に違和感を覚える人もいるかもしれません。
懐くよりも、慕うの方がしっくりくるんじゃないのかな?とか。
でも私は、これは、絶対に懐くだと思う。(原文知らないけどね)
日本語として、ちょいと説明します。この本を最後まで読んだとき、きっとなつくのぴったりさが分かると思うのです。
そのぴったりさを味わってもらえたら!と思うので、ここでまさかの漢字解説。
①慕:幕と同じで、その下に心。見えない相手を想うことから来ています。
②懐:心に、右側は衣服の象形と目から涙が垂れている象形で出来ているので、
死者をなつかしみ想うことから来ている。
話をもとに戻して。
最後に王子さまがキツネにさよならを言いに行った時、キツネが秘密を教えてくれます。
ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない。
きみのバラをかけがえのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ。
きみは忘れちゃいけない。きみはなつかせたもの、絆を結んだものには、永遠に責任を持つんだ。
本当に探しているもの なつくほどの時間を持つこと
王子さまの言葉がとても分かりやすくて、忙しない日々を送る大人にはグサッとくるでしょう。
人間たちって・・・
特急列車にのっているのに、なにをさがしているのかもうわからないんだね。だからせかせか動いたり、同じところをぐるぐるまわったり・・・
自分のことを言われているのかと、ハッとしました。
きっとこれは、大人になった今だから分かることだった気がします。子どもからみたら、本当にそうでしょう。なんだか大人たちって、忙しい。でも何がそんなに忙しいんだろうって。何をあくせくと、探し追い求めているんだろうって。
目の前の楽しさを忘れるほど、何を、どれだけ遠くを見ているんだろうって。
最後に「僕」と王子さまとのお別れの時、王子さまは自分の星に帰るのだけれど、こう言い残します。
きみが星空を見上げると、そのどれかひとつにぼくが住んでるから、そのどれかひとつでぼくが笑ってるから、きみには星という星が、全部笑っているみたいになるっていうこと。
とっても素敵。
どこに居るかは見えないし分からないけど、でもきっと居る。
王子さまは星に、家に帰るだけなんだけど、どこかそれが亡き人を連想させる。今はもういない人を思って星を見る。まさに、懐かしむ、なのです。
懐かしむほどの時間を、その人とは共有していたということ。そうやって育んだ目には見えない絆があったのだという証なのです。
懐かしいその人は、きっとお空で笑ってる。そう思ったら、とっても温かい気持ちになりました。
星の王子さま という日本語訳の素晴らしさ
これは今回の翻訳者の河野さんがつけたわけではないですが、フランス語の直訳では、このタイトルにはならないんです。
直訳するとすれば、小さな王子様。
もう全然違うよね。
星の王子さま、って、なんて素晴らしい訳し方なんだろうと思いました。
星を眺める時、懐かしむとき。それは目で見ているのではなくて、心で想っている時間なのです。確かに目には星が見えているんだけど、きっと心の目で、目には見えない何かを思っている。
そしてその星のどこかに、あなたにとっての小さな王子さまが、居る。
そういうことな気がします。
今回触れませんでしたが、バラと王子さまの関係も胸がきゅんと切なくなります。
バラと過ごした時間は、「はかない」と王子さまは教わるんです。その儚さって、やっぱり目には見えなくて、それはキツネが教えてくれたように、絆だったんだと思うんです。特別な存在だったんです。王子さまにとって、宇宙でたった一輪のバラ。
そうだよ。
あなたも、宇宙でたった一人の人なのだ。
きっとどこかに居る星の王子さまが、あなたのことを見てくれているんだよ。物語のなかの「僕」と王子さまと同じように、あなたのことを、王子さまにとってたった一人の人として。
星を見上げてみてください。
そこには今、だれの顔が思い浮かびますか?
きっとその人が(生きていても、亡くなっていたとしても)、あなたにとって、一番の、たった一人の儚い人なんだと思うな。
う・・・。寒くなってきたね。お風邪など、めされぬように温かくしてね。
あー!結局ネタバレね。書いちゃった・・・。でも全部は書いてないから、読んでみて。(ごり押し。笑)
たまには夜空を見上げて欲しいにゃ。
心にも、時間にもそんなゆとりをもって生きていけたら、どんなに素敵なことか、とおもったとても寒くて天気の悪い今宵なのでした。
したらばまたにゃん。