女に成る瞬間、それも男の手で【読書感想文】
こんばんは。にゃんちーです。
寒い、寒すぎてラーメン食べたから腹がぼってりしています。明日は塩気で浮腫んで顔がぱんぱんになるでしょう…とほほ。
今日は更新が遅くなっちゃったので、サクッと。
純文学でいきます。
好きなんです、国語とか現代文の教科書に載っているような小説が。何がってたいがい、文体が綺麗です。漢字が難しかったり、知らない言葉もあったりしますが。それもまた肥やしになるということで。
『刺青』 谷崎潤一郎
新潮社のHPから拝借。
青空文庫にもあるんじゃないでしょうか。
純文学が苦手という方は、こちらのサイトはいかがでしょうか。
谷崎潤一郎『刺青』 しせい、と読みます。いれずみ、ではないです。
谷崎潤一郎の短編小説になります。
書き出しが秀逸です。
それはまだ人々が「愚(おろか)」と云う貴い(とうとい)徳を持って居て…略。
愚か、と言いながらも、それが貴い、つまり貴重な徳だと言っているのです。しかも、それはまだ、と頭につく。驚きでしかありません。
人はいつだって愚かな側面をもっています。それが貴重だなんて、どうして言えたのでしょうか…。それを谷崎の純粋さと見ればいいのか、ある種の皮肉と見ればいいのか、谷崎のそうした含みのある視点が垣間見えます。
とても、とても短い小説なので、本当にすぐ読めてしまいます。それなのに、読んでいて脳内でショートムービーでも観ているかのような気分になります。
全体としてどこもかしこも、とても美しい文章です。
日本語には、話し言葉にしても、書き言葉にしても、心地よい流れというものがあると思っています。筆で字を書く時、筆致が続いて次の文字に繋がって、流線を描くように。
『刺青』は流れるような文体で、優しく、美しい。そして、物語の中身も相まって、もはや甘美でもあります。
少女に主人公(男)が刺青をいれる、そして少女は、少女から「女」になる、そんな瞬間が官能的に、しかし非常に上品に描かれています。少々、谷崎の性癖のようにも感じなくもありませんが…。深読みしすぎかにゃ?
清吉は清潔な人間の皮膚を、自分の恋で彩ろうとするのであった。
恋で彩る、それも刺青で。なんて洒落た言い回しなんでしょうか。
そして清吉(主人公の男)が、少女の背中に入れたのは、蜘蛛の刺青です。彫りあがって痛がる彼女に、 彼はこう言い放つのです。
「苦しかろう。体を蜘蛛が抱きしめているのだから」
ここに、主人公そして谷崎の、美に対する征服欲を感じます。そして刺青をいれられた少女は、それに屈服する。それが猶更、美しい。美は強者と言わんばかりです。
谷崎は、そうした美徳を持っていた人なのかもしれません。よくある谷崎の写真は、太々しい感じですけど。(一言余分だにゃ。へへ)
実は『刺青』は谷崎の処女作です。
これが処女作というのだから恐ろしい。すでに出来上がった谷崎のもつ美しい世界が文章の隅々に表れています。性的描写がけばけばしくないのは、もしかしたら、谷崎は俗にいう下心を持って女を見ず、美の骨頂として見つめていたのかもしれません。
だからこそ、少女から女に変貌する様を、こんなに美しく描けるのではないでしょうか。
しかし一方で、女とやらにするには、男が必要なのかもしれません。
刺青は、痛みをともない針を刺す、それは初めての性行為を匂わせているようにも感じます。決して女を下に見ているわけではないのですが、今でいえば、女は男で変わる…といったところでしょうか。そんな真理も突いている気がします。
何せよ美しい。短いので本当に読んでみてほしいにゃ!
ようこそ、純文学の世界へ。なんちゃって。
今日は短め。
最後までお付き合いくださって、ありがとうございました◎
おー…遅くなったー。いつも同じ時間に更新できればいいのだけれどな。
風呂入って寝る。おやすみにゃん。